東京高等裁判所 昭和33年(ネ)1078号 判決
当審証人大石悦司の証言とこれにより成立を認める乙第一号証第三号証の一乃至四とを総合すれば、右焼電話は昭和二十九年二月頃その復活を許可せられたが、架設費七万四千円を支払わなければ加入権を喪失する状態にあり、それにも拘らず大石は右金員を支払う能力がなかつたので、止むを得ずこれを金八万円で控訴人(但し実質上の譲受人はその使用主左近与四郎)に譲渡することとし、その代金を以て右支払に宛てて加入権を確保し、同年三月三十一日これを控訴人に譲渡した上同人から賃借したことを認めることができる。他の全証拠によるも右認定を覆すことはできない。右の如く架設費を支払わなければ加入権を喪失するに拘らず、これを支払う能力がない場合、譲渡する約束の下に他人から架設費の支出を得てその権利を確保した上譲渡したからといつて、一般担保たるべき資産を何等減少するものでない。殊に本件においては、かかる措置を講ずることにより、電話加入権を失う点においては変りないけれども、幾分とも現金(差額の六千円)を取得し且つ電話を賃借することを得たのであるから、資産を減少したのではなく却て多少なりとも増加したと言うべきである。
(薄根 村木 元岡)